深紫外LEDの構造

深紫外LEDは、LED素子・保護ダイオード・パッケージ基板・レンズから成り立っています。

深紫外LEDの外観

「高品質」「高出力」「高効率」を実現する3つの技術

スタンレー電気は「LED素子」「パッケージ構造」に対して工夫を重ねることで、他社には実現できない独自の深紫外LEDを開発しました。

LED素子

【図2】に示す通り、LED素子は最上部にあるAℓN基板に各層を積層させて作られています。スタンレー電気は、この積層の土台となるAℓN基板に2つの特徴的な技術を用いています。

深紫外LEDの断面図 LED素子拡大図

結晶欠陥の少ない基板材質を利用

LED素子を作る上で、LED素子構造の下地となる基板は、層を積み重ねていく土台となる部分です。基板とn-AℓGaN(窒化アルミニウムガリウム)層の格子定数(結晶の粒の間隔)の差が大きいと結晶欠陥が増えてしまうため、n-AℓGaN層と近い材質の基板を使うことで結晶品質を高くしています。
多くの深紫外LEDの基板には、青色LEDに用いられているサファイア材質が使われていますが、結晶の粒の間隔(格子定数)が大きいため、基板の積層に亀裂が入りやすく、特に265nmのように短い波長の積層はより難しいとされています。亀裂が入ると大電流を流しても光を効率良く発することができません。また、小電流を流しただけで基板の温度が上がり、効率が落ちてしまいます。

素子タイプ 構造 特徵
AlN基板 結晶欠陥→
1万個/cm²
サファイア基板の1/1万 結晶欠陥が
少ない
高効率
高出力
サファイア 基板 結晶欠陥→
1億個/cm²
結晶欠陥が
多い
× 低効率
低出力

そこでスタンレー電気は殺菌効率の高い265nm波長を実現するために、アルミニウム(Aℓ)と窒素(N)からなるAℓN基板を保有するヘキサテック社を買収し、高度な技術力が要求されるAℓN基板の製造を有しました。結晶の粒の間隔が小さく、きれいな積層構造を作ることができる【図3参照】ため、亀裂が入りにくく(結晶の欠陥が少なく)なっています。

図3 積層構造比較

積層構造比較

これによって、高出力かつ小電流で光を発生させることが可能になりました。スタンレー製LEDは大電流を流しても高い出力を維持できます。

また、結晶欠陥が少ないAℓN基板を採用することで、高い温度環境においても高出力を実現。サファイア基板を使ったLEDは大幅に効率が落ちますが、スタンレー製は高い効率を維持でき、優れた温度特性となっています【図4参照】。

図4 基板材質別温度特性比較

基盤材質別温度特性比較

厚みがあるにも関わらず透過率の高い積層基板を実現する生成方法

この技術は、素子から発光される光をより効率よく取り出す(光取り出し効率)ための技術です。AℓN基板は、LED素子の窓のような役割を果たし、透過性が高いほどたくさんの明るい光を取り出すことが可能です。また基板に厚みがあることで、製造プロセスにおいて取り扱いの難易度を下げることに繋がります。つまり、基板には「高い透明性+厚み」が重要になります。しかし一般的な”昇華法”では、結晶の中に不純物が入ることで透明性が落ちてしまい、また、厚みを持たせようとすると今度は透明性が下がってしまいます。

そこでスタンレー電気では、厚みを持たせたまま透明性の高い基板を作るために”HVPE(ハイドライト気相成長)法”という技術を採用しました。従来の昇華法によるAℓN基板に比べて、波長300nm以下(除菌効果が高い265nm付近)の透過率が格段に高く、光を効率よく取り出すことができます【図5参照】。
このように、素子から強く発した光を、より効率よく取り出すことで「高効率」を実現しています。

図5 HVPE法で作製したAℓN積層基板の透過率特性

HVPE法で作製したAℓN積層基盤の透過率特性