VCSELとは

VCSELは、Vertical Cavity Surface Emitting Laser(垂直共振器型面発光レーザー)の略語で、半導体レーザーの一種である。従来の半導体レーザー(端面発光レーザー)は基板に対して平行方向にレーザー光を出射するのに対して、VCSELは基板に対して垂直方向に出射する。

VCSELの素子は小型、発光効率が高い、低消費電力、そして高い指向性が特徴である。2次元配列化が可能なことからパッケージとしての高出力化が可能であり、ギガ帯の高速パルス点灯(高速変調)ができる高速応答性も特徴となっている。

赤外VCSEL光源の優位性:LEDとの比較

先進車載赤外センシングアプリケーションにおけるVCSELの優位性は主に以下の4点で、赤外LEDとの比較を例に説明する。

1照射パターン:カメラの画角(FOV)に適した配光制御が可能

赤外LEDは円形で中心にピークがある配光となるが、VCSELは面発光レーザーであり、素子の2次元配列が可能なため、その照射は均一である。さらに、ディフューザーの装着により配光を長方形に制御可能である。下図のVCSELの配光は、ディフューザーによる2種類の照射角度の例である。この特徴は、ドライバー・乗員の監視アプリケーションの車室内全体の監視を行う乗員監視システム(OMS)などの高性能化に有効である

2応答速度:高速なパルス点灯による高解像度化、広角化、リアルタイム化

VCSELは素子体積が小さいため、LEDでは不可能なギガ帯の周波数でのパルス点灯(オンオフ動作)が可能である。これにより、例えば赤外光による検知と測距を行うTOFの光源として使用した場合、高解像度化、広角化、リアルタイム化が期待できる。

3発光スペクトル:狭スペクトル発光により外乱光の影響が少なく、バンドパスフィルタによる損失も少ない

LEDに比べVCSELの発光スペクトルは非常に狭く、下図の例では940 nmの標準値に対して数nmの範囲に収まる。バンドパスフィルタの通過帯域を狭くすることができ、また通過帯域を狭くしても出力の損失を低く抑えることができる。これにより、太陽光など外乱光の影響を極力低減できるので精度の高いセンシングが可能になる。

4発光波長に対する温度変化の影響:温度による変化が少ない

LEDに比べてVCSELの発光波長は温度変化に対して安定度が高いので、車載という温度変化の厳しい条件下においても、安定した性能が得られる。また、大電流で点灯させる場合の発熱に対しても性能を維持することを示す。

スタンレー電気の赤外VCSELの特長

スタンレー電気の持つ技術を集約

車載アプリケーションで使用するデバイスには、過酷な環境でも安定した品質であることが求められます。

スタンレー電気はヘッドランプ用などのハイパワーLEDで培ったパッケージ技術により、高放熱/高信頼性のVCSELデバイスを開発し、車載規格であるAEC-Q102を達成しました。
加えて、灯体や照明など様々な用途で光を扱ってきた当社の強みである配光制御技術を用い、アプリケーションに応じた配光を実現しました。

製品ラインナップ

標準品として配光の異なる2種類の製品があり、今後、更にラインナップを拡大していきます。
アイセーフティはいずれもIEC60825-1&CFR Part1040.10の安全基準クラス1であり、
人に向けて発光させても問題無いように設計されています。

写真 品番 参考図 サイズ(mm) 中心発光波長(mm) 放射束(mW) 照射角度 順電流
(mA)
順電圧
(V)
x y

UEN1ZE11085

L3.5xW3.5xH1.225 940 3000 110 85 4000 2.10

UDN1ZE65

L3.5xW3.5xH1.225 940 2100 60 45 2700 2.10

UGN1ZE140110

L3.5xW3.5xH1.225 940 10100 140 110 6000 3.80
車載アプリケーション
  • ドライバーモニタリングシステム
  • 乗員モニタリングシステム
  • LiDAR
  • ジェスチャーコントロール
その他アプリケーション
  • AGV(搬送ロボット)
  • 顔認証/虹彩認証
  • セキュリティカメラ
  • ドローン

関連情報

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