社長メッセージ


「競争力のある企業へ」
~2030年に向けて今が変化の時~
競争力とは
スタンレーグループは、経営理念の第一に「光の価値の限りなき追求」を掲げ、「光に勝つ」の気概のもと、技術、製品をつくり、提供することで社会に貢献することを目指しています。
当社グループは、2030年のあるべき姿を「競争力のある企業」と定めています。競争力というと誰かとの競争を思い浮かべますが、当社グループにおける競争力とは、そういった一般的な意味合いだけではなく光を使って安全安心を提供することで「スタンレー電気の製品に出会えてよかった」「スタンレー電気と一緒に仕事ができてよかった」とどれだけ多くの皆さまに思っていただけるか、どれだけ社会に貢献できるかを本質的には示しています。
EV化、電子化、自動化など世の中が想像以上のスピードで変化している中で、企業がその存在意義を世界に示すためには「自身の企業だけでなく業界全体として根本的に変わらなくてはならない。そのための製品をスタンレー電気と一緒につくりあげたい」と考えてくださっている方が増えていることから、当社が考える競争力は正しいのだと今は強い確信となっています。
私は、スタンレー電気は一部品メーカーとして供給責任を果たすだけでなく、業界全体の大きな変革を、世界をリードするスピードで成し遂げる一翼を担う会社にならなくてはならないと考えています。これからは自ら限界を設けることなく、お客さまと一緒に取り組む仲間として、エンドユーザーが求めているものをいち早く送り届けられるよう、努めてまいります。
第Ⅷ期中期3ヶ年経営計画1年目 振り返り
2023〜2025年度の第Ⅷ期中期3ヶ年経営計画(以下、第Ⅷ中計)の初年度にあたる2023年度は、「付加価値最大化」の考え方が定着し、体質向上の兆しが見えはじめた1年でした。
収益性を高めることに社員が前向きに取り組んでくれた結果、私が考えていた以上の結果を出すことができ、成長の第一歩を踏み出しました。また、外部環境では中国など厳しい地域もありましたが、米州の好調な地域でオフセットすることができました。すべての事業や地域で良い結果が出ることが理想ですが、現実はそれほど甘くはないので、厳しいところは好調なところがカバーするという体制にできたのも今回の大きな成果です。
加えて、Thai Stanley Electric Public Co., Ltd.(以下THS)の連結子会社化により、タイを中心としたアジアでの事業展開が視野に入ったことは大きな進歩であり、これに伴い第Ⅷ中計最終年度となる2025年度の売上高目標を5,500億円から5,900億円に、営業利益率目標を10%から10.5%にアップデートしました。なお、どのような環境下においても必ず達成すべき営業利益率「責任利益」の10%は変えていません。ROEについては、2028年度の目標10%を前倒しで達成したいと考えています。
一方で、この数年で企業に求められるものは大きく変化しています。業績だけを追い求めるのではなく、社会課題の解決に貢献する担い手となり、社会と共存を図りながら、価値を生み出すとともに利益を出す必要があります。私はスタンレー電気の社長として、アップデートした経営目標の達成に加え、社会課題を解決することで企業価値を最大化し、社会から必要とされる企業へと成長させることを自身の使命と捉え、まい進してまいります。
「競争力のある企業」実現のための3つのコンセプト
当社グループは「競争力のある企業」の実現に向けて、第Ⅷ中計を「TADAS思想のものづくり」「光の独自技術で新市場開拓」「One Stanleyでスピードのある挑戦」の3つのコンセプトで推進しています。

TADAS思想のものづくり
「TADAS」とは、当社のものづくりの基本となる考え方であり、「ADAS(先進運転支援システム)」に「T」を付けるとタダになることから生まれたネーミングです。私たちの提供する価値は安全安心ですから、いかに付加価値の高い製品であっても、安く広く万人に届けなくてはなりません。
2023年度には、安くて良いものを提供する競争力の向上に向けて、新たな生産革新活動「SNAP2」を開始しました。「SNAP2」では、付加価値最大化の考え方を定義するとともに、業績・利益に結びつく新たな活動指針を策定し、生産現場発の工数改善だけでなく、設計の段階で作りやすい構造とすることによる工数改善など、すべてのプロセスで取り組みを進めています。総生産量を増やさずに人数を減らすという考え方もありますが、当社では現在、DXで負荷を低減し、付加価値を最大化しています。当社が推進する「Stanley-DX」の特長は、世界同一システム・同一業務プロセスの実現にあります。これまでは国内・海外の各工場で、それぞれ独自に推進してきた活動を、DXによって互いの良いところを取り入れたグローバル共通の活動とすることで、付加価値を最大化するものづくりを行います。
光の独自技術で新市場開拓
電子事業の領域では、新たな光源として、進化したレーザーの一種であるVCSELや、ナノテクノロジーの活用で光の概念そのものを変えるPCSELなどが登場しています。当社は、これら光源の開発と同時に企業体質の変革を進めるべく、産学の連携に加え、スタートアップ企業への投資も視野に入れ、新市場開拓に向けた製品づくりに挑戦しています。
One Stanleyでスピードのある挑戦
2028年度の非日系カーメーカー売上高比率8%の目標を筆頭に、さらなるグローバル化を推進しています。
私自身の反省として近年のスタンレー電気は、新しいことに抵抗があったように思います。しかし、海外のメーカーは、若い世代を中心に「まずやってみよう」とダイナミックに動いています。そうした姿勢を当社にも取り入れ、「日本から」のみでなく「グローバルで同時」に価値を提供する姿が「One Stanley」です。
2024年に子会社化したTHSは収益性が高いだけでなく、そこで働くタイ人社員も物事の捉え方が前向きで、能力が高く非常に優秀だと感じています。また、米州の2つの子会社では米国人がトップを務めていますが、彼らの経営のスピード感には目を見張るものがあります。こうした現地の人材への経営のシフトを推進することで、事業展開のスピード向上を図っています。
グローバル市場を俯瞰すると、モータリゼーションにおいてタイはアジアで重要な位置づけであり、当社ではTHSを中心にしたビジネス展開を進めていきます。さらには、躍進著しい中国のカーメーカーへの供給も力を入れていきます。米州では、北米から南米まで全体のサプライチェーンにおいて、スタンレー電気の存在感を高めていくことが重要だと考えています。
また、インドのビジネスパートナーであるLumax Industries Ltd.との関係強化を図り、インドでのシェア獲得にも注力していきます。
競争力の源泉となるマテリアリティ
「一人ひとりの幸福と成長」については、社員一人ひとりが働きやすく、働きがいのある環境を整備することで、競争力のある製品を生み出す企業へと発展することを目指しています。そのために、人材方針を抜本的に見直しました。
新たな人材方針は「“自発”挑戦型人材〜Change(変化)をChance(機会)と捉える人材集団〜」です。社員自らの「目指す姿」の実現に向けて、会社が支援を行います。新たな方針を理解してもらうために、国内外の社員と私が直接コミュニケーションをとり、人材育成の方向性や文化・風土改革の必要性について説明する機会を設けています。成長実感とキャリア実現によって社員の働きがいを高め、スタンレー電気で働いていることで一人ひとりの人生設計が行えるようにしていきます。
ステークホルダーの皆さまへ
私は、株主の皆さまがあってのスタンレー電気だと強く思っています。当社の株式を保有したいという機関投資家・個人投資家の方々がいらっしゃるから当社の財務基盤が成り立っているわけですし、「スタンレー電気の株を持っていてよかった」と思っていただけるファンを増やしたいと考えています。それは、お客さまに「スタンレー電気の製品に出会えてよかった」と思われること、協業先の企業に「スタンレー電気と一緒に仕事ができてよかった」と思われることと同じと捉えています。
そのために、当社は株主価値の向上への取り組みを一段と加速していきます。確実な収益向上に加え、適正な資本政策のもと未来を見据えた投資を行い、さらなる事業の成長につながる好循環を実現していきます。得られた収益については、次の投資に使うとともに、株主の皆さまにしっかりと還元してまいります。
スタンレー電気は、光の企業として社会課題の解決に貢献し、社会と共に成長を続けていきます。株主をはじめとするステークホルダーの皆さまとは、統合報告書の発行をはじめ、今後も真摯な対話を続けてまいります。引き続きご支援・ご鞭撻を賜りますよう、お願い申しあげます。
スタンレー電気株式会社
代表取締役社長